植物工場研究所

都市型農業の一環としての植物工場

都市型農業とは一般には都市近郊の農業一般を意味し,大消費地に近い農業地域,都市の生産緑地,市民農園などにおいて営まれる農業を包含する概念です。都市型農業は住民に新鮮で安全な農産物を供給するとともに,水や緑,自然空間の提供により環境や景観を維持し,ゆとりやうるおいを提供する貴重な役割を担っていると考えられます。その一環として,観光農園や産地直売所が設置されたりするわけです。

ここでいう都市型農業とは意義はこれと同様ですが,アプローチが異なります。すなわち都市およびその近郊において,都市の狭い空間を有効利用して効率的であるとともに、都市らしい高い付加価値をつけた新しい農業形態を意味します。具体的には先端技術を利用する植物工場の利用,および植物工場に生産のみならず緑化や癒し,グルメなど多様な機能を付加するような農業です。したがってまた,アトリウムの緑化などの単なる緑化機能とも異なります。同じ空間に生産と緑化と消費の総合機能を求めるわけです。

日本農業はいま低迷しています。食糧自給率はカロリ−ベ−スで40%まで低下し、主要穀物の自給率に至っては30%を切っている。これは先進国中最低の数字で、日本の食糧安全保障は危機的です。さらに農業の低収入や3Kイメ−ジ(きつい、きたない、危険)によって後継者不足をきたし、高齢化につながっている(65歳以上が半数以上を占める)。兼業化や離農が多く、主業農家(農業所得が半分以上)は4分の1程度であり、耕作放棄地や休耕地は全耕地面積の約10分の1(40ha以上)に達している。一方、オランダのように狭い土地でありながら、施設園芸や太陽光利用型の植物工場よって立派に農業を独立させた国もあることに注意すべきです。

しかし最近は新規就農者や新規学卒就農者が少しずつ増えています。他産業からのUタ−ン就農者や、一部定年退職者や若者の農業見直しの気運によるものです。この受け入れに対して民間や政府によっていろいろの試みがなされており,これはこれで大変意義深いと思います。しかし農業基盤が弱いところに戻ってきても、現実はそんなに甘いものではない。ノスタルジアだけで農業に戻っても、相当の覚悟がないと慣れない重労働に嫌気がさして、長続きしない。多くの人はしばらくするとやめてしまう。このままでは農業の活性化につながらない。そこで農業の活性化をもたらし,アグリビジネスに貢献するような新しい都市型農業を模索する必要があります。

新しい都市型農業に望まれることは、まず天候と場所に捉われない連続生産が可能であり,無農薬、新鮮、高栄養価などの高付加価値の作物をつくることです。それにはハイテクを導入した先端的農業の選択しかありません。わが国では土地の狭さを反映して施設園芸が広く普及し、水耕栽培もだんだん伸びている。これによって多品目の野菜や花が生産されている。この延長上に植物工場があります。植物工場とは人工的な栽培環境の制御、水耕栽培と自動化・システム化の導入によって作物を周年生産するシステムです。植物工場なら高層のビル農業にもできるし、あるいはビルの任意の一角で生産可能です。

都市型農業に次に要請されることは、任意の緑化空間や癒し空間、グルメ空間などとの自由な組合せが可能なことです。植物の人工栽培ならこれを実現することができる。また地方や中山間地域に設置することも可能になる。植物工場が広く実用化すれば、農業は3Kから3A(安全、安心、安定)に転じることが期待されます。問題は採算性で,これをいかにクリアするかです。なお近年、有機農産物の人気が高いが、生産物の総合評価では工場生産物の方が一般的には優れています。残念ながらこのことは消費者にあまり知られていない。有機農業は生産物が一般に清潔でないのみならず、労働時間の増大、収量や収入の低下を招くことがあるし、有機肥料の入れすぎで環境破壊の例があります

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